お知らせ

令和6年度北海道釧路江南高等学校における「学校いじめ防止基本方針」


1 趣旨
本校は、「叡智・希望・慈愛」を校訓のもと、「学びで自立できる生徒」「夢を追求する生徒」「思いやりのある生徒」を目指す生徒像とし、進学重視型単位制高等学校として、未来の社会を担う人材の育成を目標としている。
前身の女学校時代から培われてきた、豊かな情操と高い教養の習得を目指し、心身ともに健全で品位ある生徒を育てる教育により、全ての生徒の安心・安全を保障し、いじめのない有意義で充実した学校生活を送ることができるよう「学校いじめ防止基本方針」を定める。


2 基本理念


(1)基本的生活習慣を確立させ、柔軟な想像力を生かすとともに、多角的に物事を捉えて自身の未来像を描き、自己決定、また「自己指導力の育成」を目指し、いじめのない他者を尊重する雰囲気を創出する。


(2)いじめを受けた生徒にも、何らかの原因がある、責任があるという考え方はあってはなら
ない。生徒に対していじめにつながるような不適切な方法で人間関係の問題等に対応することで、いじめの芽が生じ、いじめに向かうことのないよう、いじめの未然防止に努める。また、発生したいじめに対しては、関係者相互の連携の下、早期に解消する。


(3)生徒が発達の段階に応じて、望ましい人間関係を自ら構築していく力とともに、けんかな
ど交友関係から生じたトラブルやいじめの問題を解決し、人間関係を修復していく力を身に付け、安心して学習やその他の活動に取り組むことで、将来の夢や希望をしっかり持って、主体的に個性や能力を伸ばし、変化の激しい社会において、自立し、粘り強く、たくましく生きていくことができる力を育む。


3 いじめの理解


(1)いじめの定義
「生徒に対して、当該生徒が在籍する学校に在籍している等当該生徒と一定の人的関係にある
他の生徒が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを
含む。)であって、当該行為の対象となった生徒が心身の苦痛を感じているものをいう。


(2)いじめを理解するにあたっての留意点
(ア)いじめを受けた生徒の中には、「いじめを受けたことを認めたくない」、「保護者に心配をか
けたくない」などの理由で、いじめの事実を否定することが考えられることから、いじめに当たるか否かの判断は表面的・形式的に行うのでなく、いじめを受けた生徒や周辺の状況等を踏まえ、客観的に判断し、対応する。


(イ)インターネットを通じたいじめなど、本人が気付いていない中で誹謗中傷が行われ、当該生徒が心身の苦痛を感じるに至っていない場合も、いじめと同様に対応する。

 

(ウ)生徒の善意に基づく行為であっても、意図せずに相手側の生徒に心身の苦痛を感じさせてしまい、いじめにつながる場合もあることや多くの生徒が被害生徒としてだけではなく、加害生徒としても巻き込まれることや被害、加害の関係が比較的短期間で入れ替わる事実を踏まえ、対応する。なお、軽い言葉で相手を傷つけたが、すぐに加害生徒が謝罪し教員の指導によらずして良好な関係を再び築くことができた場合等においては、学校は、「いじめ」という言葉を使わず指導するなど、柔軟な対応による対処も可能である。ただし、これらの場合であっても、いじめに該当するため、事案を法第22条及び条例第23条に基づいて設置する組織(以下「学校いじめ対策組織」という。)で情報共有して対応する。


(エ)「けんか」や「ふざけ合い」であっても、見えない所で被害が発生している場合もあるため、背景にある事情の調査を行い、生徒の感じる被害性に着目し、いじめに該当するか否かを判断するものとする。日頃からグループ内で行われているとして「けんか」や「ふざけ合い」を軽く考え、気付いていながら見逃してしまうことも少なくない。ささいに見える行為でも、表には現れにくい心理的な被害を見逃さない姿勢で対応する。


(オ)生徒が多様性を認め互いに支え合いながら、健やかに成長できる環境の形成を図る観点から、例えば、「性的マイノリティ」、「多様な背景を持つ生徒」等学校として特に配慮が必要な生徒については、日常的に、当該生徒の特性を踏まえた適切な支援を行うとともに、保護者との連携、周囲の生徒に対する必要な指導を組織的に行う。


(3)いじめの内容
具体的ないじめの態様としては、次のようなものがある。


・冷やかしやからかい、悪口や脅し文句、嫌なことを言われる
・仲間はずれ、集団による無視をされる
・軽くぶつかられたり、遊ぶふりをして叩かれたり、蹴られたりする
・ひどくぶつかられたり、叩かれたり、蹴られたりする
・金品をたかられる
・金品を隠されたり、盗まれたり、壊されたり、捨てられたりする
・嫌なことや恥ずかしいこと、危険なことをされたり、させられたりする
・パソコンや携帯電話等で、誹謗中傷や嫌なことをされる


これらのいじめの中には、犯罪行為として取り扱われるべきと認められ、早期に警察に相談することや、生徒の生命、身体又は財産に重大な被害が生じるような、直ちに警察に通報することが必要なものが含まれる。これらについては、教育的な配慮や被害生徒の意向を十分に配慮した上で、生徒の命や安全を守ることを最優先に、早期に警察に相談・通報を行い適切な援助を求め対応するとともに、学校警察連絡協議会等を活用し、日頃から緊密に連携できる体制を構築する必要がある。また、嫌がらせなどの「暴力を伴わない“いじめ”」であっても、繰り返されたり、多くの者から集中的に行われたりすることで、「暴力を伴う“いじめ”」と同様、生命、身体に重大な危険を生じさせる場合があることに留意する必要がある。


(4)いじめの要因
いじめの要因を考えるに当たっては、次の点に留意する。


(ア)いじめは、生徒同士の複雑な人間関係や心の問題から起こるものであり、いじめの芽はど
の生徒にも生じ得る。


(イ)いじめは、単に生徒だけの問題ではなく、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメン
ト、他人の弱みを笑いものにしたり、異質な他者を差別したりするといった大人の振る舞いを反
映した問題でもあり、家庭環境や対人関係など、多様な背景から、様々な場面で起こり得る。


(ウ)いじめは、加害と被害という二者関係だけでなく、はやしたてたり面白がったりする「観
衆」の存在、周辺で暗黙の了解を与えている「傍観者」の存在や、学級や部活動等の所属集団の
閉鎖性等の問題により、いじめは行われ、潜在化したり深刻化したりもする。


(エ)いじめの衝動を発生させる原因としては、①心理的ストレス(過度のストレスを集団内の
弱い者を攻撃することで解消しようとする)、②集団内の異質な者への嫌悪感情(凝集性が過度に高まった学級集団では、基準から外れた者に対して嫌悪感や排除意識が向けられることがる)、③ねたみや嫉妬感情、④遊び感覚やふざけ意識、⑤金銭などを得たいという意識、⑥被害者となることへの回避感情などが挙げられる。そのため、一人一人を大切にした分かりやすい授業づくりや、生徒の人間関係をしっかりと把握し、全ての生徒が活躍できる集団づくりが十分でなけれ ば、学習や人間関係での問題が過度なストレスとなり、いじめが起こり得る。


(オ)いじめは、生徒の人権に関わる重大な問題であり、大人も生徒も、一人一人が「いじめは絶対に許されない」、「いじめは卑怯な方法である」との意識を持ち、それぞれの役割と責任を十分自覚しなければ、いじめから生徒を守り通すことは難しい。そのため、生徒の発達の段階に応じた「男女平等」、「子ども」、「高齢者」、「障がいのある人」、「性的マイノリティ」、「多様な背景を持つ生徒」などの人権に関する意識や正しい理解、自他を尊重する態度の育成、自己有用感や自己肯定感の育成を図る取組が十分でなければ、多様性を認め互いに支え合うことができず、いじめが起こり得る。


(5)いじめの解消
いじめは、単に謝罪をもって安易に解消とすることはできない。いじめが「解消している」状
態とは、少なくとも次の2つの要件が満たされている必要がある。ただし、必要に応じ、被害生
徒と加害生徒との関係修復状況など他の事情も勘案して判断するものとする。


(ア)いじめに係る行為が止んでいること
被害生徒に対する心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるも
のを含む。)が止んでいる状態が相当の期間継続していること。この相当の期間とは、少なくとも3か月を目安とする。ただし、いじめの被害の重大性等から更に長期の期間が必要であると判断される場合は、この目安にかかわらず、学校の設置者又は「学校いじめ対策組織」の判断により、さらに長期の期間を設定するものとする。学校の教職員は、相当の期間が経過するまでは、被害・加害生徒の様子を含め状況を注視し、期間が経過した段階で判断を行う。行為が止んでいない場合は、改めて、相当の期間を設定して状況を注視する。


(イ)被害生徒が心身の苦痛を感じていないこと
いじめに係る行為が止んでいるかどうかを判断する時点において、生徒がいじめの行為により心身の苦痛を感じていないと認められること。生徒本人及びその保護者に対し、心身の苦痛を感じていないかどうかを面談等により確認する。学校は、いじめが解消に至っていない段階では、生徒を徹底的に守り通し、その安全・安心を確保する責任を有する。「学校いじめ対策組織」においては、いじめが解消に至るまで被害生徒の支援を継続するため、支援内容、情報共有、教職員の役割分担を含む対処プランを策定し、確実に実行する。いじめの解消の見極めに当たっては、学校や保護者のほか、「学校いじめ対策組織」を活用し、必要に応じてスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどを含めた集団で判断することが大切である。上記のいじめが「解消している」状態とは、あくまで、一つの段階に過ぎず、「解消している」状態に至った場合でも、いじめが再発する可能性やいじめを受けたことによる心理的な影響が容易には消えない場合も十分にあり得ることを踏まえ、学校の教職員は、当該いじめの被害生徒及び加害生徒については、日常的に注意深く観察する必要がある。


4 いじめ防止の指導体制・組織的対応
(1)日常の指導体制
いじめを未然に防止し、早期に発見するための日常の指導体制を以下の通りにする。
 別紙1 ※いじめ防止委員会の設置


(2)緊急時の組織対応
いじめを認知した場合のいじめの解決に向けた組織的な取組みを以下の通りにする。
 別紙2 ※いじめ対策委員会の設置


5 いじめ防止の具体の取組み
いじめ問題への対応では、いじめに向かわせない態度・能力の育成等、いじめが起きにくい・
いじめを許さない環境づくり等の予防的な取組が体系的・計画的に求められる。未然防止の基本
となるのは、生徒が周囲の友人や教職員と信頼できる関係の中、安心・安全に学校生活を送るこ
とができ、規律正しい態度で授業や行事に主体的に参加、活躍できるような授業づくりや集団づ
くり、学校づくりを行っていくことである。
(1)いじめの起きない学校環境づくり
(ア)単位制の特徴を活かし、生徒一人ひとりの自己実現を目指す教育による、活気に満ちたいじめのない学校づくり


(イ)「日本一授業を大切にする学校」を目指し授業評価等の実践による授業規律と質の保障

(ウ)「江南の朝」と称する、教員全員での毎朝の指導による遅刻の防止や挨拶の励行及び登校時間にクラシック音楽等を流すことや、階段前のホワイトボードにパンダの絵と格言を書いて自己啓発を促すなど落ち着いた学校生活のスタートへの環境作り


(2)いじめが芽生えない人間関係と心の醸成
(ア)入学直後の宿泊研修での外部講師による構成的グループエンカウンター等の実践による早期からの良好な人間関係の構築


(イ)交通事故被害者の会や警察と連携した「交通安全特別講座」等の他人を思いやり、自分と仲間の命を大切にする教育の推進


(ウ)完全ノーチャイム制の実施による、自制心や自立心などの自己指導能力の育成


(3)いじめの早期発見と早期解決
(ア)定期的な担任との面談と年2回のいじめアンケート調査によるいじめの早期発見
(イ)年2回のQ-Uテストの実施と活用による、個々の生徒の悩みやクラス集団の状況の早期把握と対応
(ウ)教育相談委員会を機能させた、一人ひとりの生徒への組織的な教育相談体制の確立
(エ)外部講師を活用した「インターネット携帯電話教室」の実施や定期的なネットパトロールによる、SNSなどネットによるいじめ防止
(オ)年3回のピアサポートにより相手を思いやる心や、共感する心の醸成をはかる。
(カ)年5回の心と身体のチェックを全教職員で共有し全職員で全生徒を見守る態勢をつくる。


6 いじめ発見時の対応
いじめ行為を直接発見した場合は、その行為をすぐに止めさせるとともに、いじめられている
生徒や通報した生徒の安全を確保する。緊急時における組織的な対応を心がけ事実確認を速やか
に行う。これらの対応については、教職員全員の共通理解、保護者の協力、関係機関・専門機関
との協力の下に取り組む。


(1)生徒への対応
(ア)いじめられている生徒の苦痛を共感的に理解し、心配や不安を取り除くとともに、全力で
守り抜くという「いじめられている生徒の立場」で継続的に支援することが重要である。
①安全、安心の確保
②心のケアの充実
③今後の対策について、共に考える
④活動の場等を設定し、認め、励ます
⑤温かい人間関係の構築


(イ)いじめている生徒へ、いじめは決して許されないという毅然とした態度で、いじめている
生徒の内面を理解し、他人の痛みを知ることができるような指導を根気強く丁寧に行う。
①いじめの事実確認
②いじめの背景や要因の理解
③いじめられている生徒の苦痛に気付かせる
④今後の生き方を考えさせる
⑤必要により懲戒を加える。


(2)まわりの関係集団への対応
被害・加害生徒だけでなく、まわりにいて見て見ぬふりをしたり、止めようとしなかった
りした集団に対して、自分たちでいじめ問題を解決する方法を考えさせ、集団の課題解
決力を高める。
(ア)自分の問題として捉えさせる
(イ)望ましい人間関係の構築を考えさせる
(ウ)自己有用感が味わえる集団づくり


(3)保護者への対応
(ア)いじめられている保護者から相談された場合、複数の教員で対応し、学校は全力を尽く
すという決意を伝え、安心感・信頼を与えられるようにする。
①じっくりと話を聞き、保護者の要望・意向を受け止め整理する。
②苦痛に対して本気になって精一杯の理解を示す。
③親子のコミュニケーションを大切にするなどの具体的な解決策を共に考え協力を求める。


(イ)いじめている生徒の保護者に対して、事実を把握したら速やかに面談を行い、丁寧に説明し状況の理解に努める。
①いじめは誰にでも起こる可能性があり、生徒や保護者の心情に配慮しながら、学校の指導について理解・協力を求める
②いじめられた生徒との人間関係を修復していくことを目的として、学校と連携を密に適切な対応に努める。


(ウ)保護者同士が対立するなどの場合は、必要に応じて教員が間に入り関係調整を行う。
①双方の和解を急がず、相手や学校に対する不信等の思いを丁寧に聞き入れ、寄り添う姿勢で臨む。
②管理職が率先して対応することが有効な手段となることもある。
③教育委員会や関係機関と連携し解決を目指す。


(4)関係機関との連携
いじめは学校だけでの解決が困難な場合もあり、情報の交換だけでなく、関係期と連携して、
一体的な対応することが重要である。


(ア)教育委員会(釧路教育局)との連携
①関係生徒への支援・指導、保護者への対応の仕方
②関係機関の紹介・調整


(イ)警察との連携
①心身や財産に重大な被害が疑われる場合
②犯罪等の違法行為がある場合

(ウ)福祉関係機関との連携
①家庭の養育に関する指導・助言
②家庭での生徒の生活、環境の状況把握


(エ)医療機関等との連携
①精神保健に関する相談(カウンセリング)
②精神症状についての診断・治療、指導・助言


7 ネットいじめへの対応
ネットいじめとは文字や画像を使い、特定の生徒の誹謗中傷を不特定多数の者や掲示
板等に送信したりする。また、特定の生徒になりすまし社会的信用をおとしめる行為や
掲示板等に特定の生徒の個人情報を掲載するなどといった犯罪行為のことである。


(1)ネットいじめの予防
・保護者への啓発
・フィルタリングの設定
・保護者の見守り・指導
・情報教育の充実
・教科「情報」における情報モラル教育の充実
・ネット社会についての講話(防犯講話)の実施


(2)ネットいじめへの対処
・ネットいじめの把握
・被害者からの訴え
・閲覧者からの情報
・ネットパトロール


8 重大事態への対応
重大事態とは、いじめにより生徒の生命、心身又は財産に重大な被害が生じた疑い
があると認める場合や、生徒が相当の期間、学校を欠席することを余儀なくされてい
る疑いがあると認める場合などである。


(1)具体的な重大事態
・生徒が自殺を企画した場合
・精神性の疾患を発症した場合
・身体に重大な障害を負った場合
・高額の金品を奪い取られた場合
・年間の欠席が30日程度以上の場合
・連続して欠席した場合(状況により判断)


(2)重大事態時の報告・調査協力

学校が重大事態と判断した場合、北海道教育委員会(釧路教育局高校班)へ速やかに
報告し、いじめ問題対策チ-ムとも連携しながら、指示・指導を受ける。また、北海道
が設置する重大事態調査のための組織に協力する。


9 本方針の点検・見直し
本方針は、いじめ防止委員会において毎年点検を行い、学校Webページを通じて公開す
る。本方針を見直す際には、いじめ防止等に関する考え方を共有しながら、学校の取り組
みを円滑に進めていくため、必要に応じて、保護者、地域住民、関係機関等の参画を得て
進める。また、学校全体で「いじめ防止」に取り組むため、アンケートや協議の場を設け
るなどして、生徒の意見を取り入れた内容になるように努める。